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エゾノウワミズザクラ
Padus avium

 北海道と青森の主に低地、肥沃な湿地周辺や河川沿いに分布しています。国内の分布域は狭いのですが、国外では極東ロシアからヨーロッパに渡る冷涼な気候地帯の広範囲に自生しています。樹高は10〜15m、葉の長さは6〜13cmの倒卵形で先端は尖がり、細鋸歯で覆われています。葉柄の上側にイボ状の蜜腺が2つあります。同属のウワミズザクラは葉身の基部に蜜腺がありますが、はっきりと識別できません。[1][2][3]

 花は同属と同様にブラシ状の総状花序ですが北海道に分布する同属のシウリザクラと違って花序にはまばらに花が付きます。シウリザクラよりも大きい直径1〜2cm程度の白い花が5〜6月に20〜40の花が咲きます。雄しべは目立ちませんが、他方ウワミズザクラは花弁よりも雄しべの方が長く目立ちます。果実は球形で、7〜8月に紫がかった黒色に熟します。

低い結実率

 多数の花が咲くわりには結実率が低く、0~10%程度です。完全な自家不和合性(同じ個体の花粉では受精しない遺伝的な性質)ではないものの、他殖生(他の個体の花粉を授精する他家受粉による生殖)が強いようです。結実率の低い固体は他の個体が近くに無い場合で、他の個体から強制的に受粉させると結実率は10%近くに達したそうです。一方で、萌芽や伏条枝、倒木による栄養繁殖(クローン)が活発に行なわれます。[4][5]

 同種は英語で「Bird Cherry」と呼ばれ、その名のとおり鳥がエサとしてついばんでいくとのこと。香気が強く、この香りで病魔が逃げるよう、同種(アイヌ語で「キキンニ」)でアイヌはイナウを作ったそうです。「キキンニ」とは身代りに出て危険を追い払う木、という意味です。[6]

参考文献
  1. 茂木透ら(2009)『樹に咲く花―離弁花(1)(第4版)』山と溪谷社
  2. 佐藤孝夫(2011)『北海道植物図鑑』亜璃西社
  3. 林将之(2014)『樹木の葉』山と溪谷社
  4. 小川瞳ら(2006)『花は咲けども実はならぬ -エゾノウワミズザクラは種子繁殖をしているのか-』「日本森林学会北海道支部論文集」54、pp.133-135
  5. 斎藤新一郎(1999)『エゾノウワミズザクラの伏条繁殖について』「専修大学北海道短期大学紀要」32、pp.57-78
  6. 福岡イト子(1995)『アイヌ植物誌』草風館

Gallery

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樹形

勇払原野(May 25, 2014)

北海道と青森の主に低地、肥沃な湿地周辺や河川沿いに分布しています。

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勇払原野(May 25, 2014)

葉の長さは6〜13cmの倒卵形で先端は尖がり、細鋸歯で覆われています。

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芽吹

勇払原野(Apr. 12, 2015)

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勇払原野(May 25, 2014)

直径1〜2cm程度の白い花が5〜6月に20〜40の花が咲きます。

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樹皮

勇払原野(May 10, 2014)

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食害

勇払原野(Mar. 31, 2018)

Property
分 類
和名 エゾノウワミズザクラ(蝦夷の上溝桜)
学名 Padus avium
(Syn. Padus racemosa)
バラ目(Rosales)
バラ科(Rosaceae)
ウワミズザクラ属(Padus)
分布 日本、アジア北部、ヨーロッパ北部
国内 北海道、東北
用途
特 徴
針広 広葉樹
常落 落葉樹
樹高 高木
葉形 単葉(不分裂)
葉序 互生
葉縁 鋸歯
雌雄 雌雄同株(両性花)
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