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ハウチワカエデ
Acer japonicum

 北海道から本州にかけての山地に自生している日本固有種です。関東地方では標高1,000mを超えるような山地に生育していますが、北海道では平地や丘陵地で見ることができます。樹高は高くても10mほどで、樹皮は灰褐色で縦に浅い裂け目が入ります。その葉は、鳥の羽を使った団扇「はうちわ」の名が付くように9〜11に分裂します。葉身は7〜14cmなのに対して葉柄はその1/2程度と、近しいコハウチワカエデの2/3、オオイタヤメイゲツの1と比較して短いのが特徴です。4月〜6月に咲く花は複散房花序で紅紫色をしているため、開花期はよく目立ちます。雌花にも雄しべがありますが、葯から花粉を出しません。果実は鈍角に開く翼果で、7〜9月に熟します。全体的に毛が多く、葉裏の葉脈や脈腋、葉柄、花柄、果実に白く細かい毛が生えています。[1][2][3][4]

Heterodichogamy

 Heterodichogamyとは、異形異熟や異型雌雄異熟性などと呼ばれ、端折って説明すると、雄花を先に開花させてから雌花を咲かせる個体(雄花先熟個体)、逆に雌花を先に開花させてから雄花を咲かせる個体(雌花先熟個体)の2つの個体が存在する集団のあり方、また開花様式のことです。雌雄が反転するのは1回だけでなく、複数回繰り返す植物もあります。またアボガドの花は両性花ですが、開花した午前中のみ雌しべが受粉可能(雄しべは花粉を出さず)となり当日の午後から翌日午前中までは花を閉じ、そして午後になると再び開花して雄しべが花粉を出す(雌しべは受粉不可能)という個体、その逆の個体もあるという面白い開花様式ですが、これも異形異熟の1種です。[5]

 ハウチワカエデもHeterodichogamyを示しますが、その生態について継続して調査した報告があります。1つの花序に雄花と雌花を混在させる雄花先熟個体と雌花先熟個体があり、一部に雄花だけの花序のみからなる個体(雄個体)もあります。面白いのは同じ個体でも年により花序の構成が変化する場合があるとのことです。雄個体から雄花先熟個体にまたその逆に変化する個体が複数確認されています。雄花先熟個体の雄花と雌花先熟個体の雌花の交配が促進される形になっていることから、これは雌雄異株への進化につながると著者は結論づけています。[6]

参考文献
  1. 茂木透ら(2009)『樹に咲く花―離弁花(2)(第2版)』山と溪谷社
  2. 林将之(2014)『樹木の葉』山と溪谷社
  3. 猪狩貴史(2010)『カエデ識別ハンドブック』文一総合出版
  4. 加藤雅啓ら(2011)『日本の固有植物』東海大学出版会
  5. 福原達人(2011)『Heterodichogamy(異型異熟)の自然史』「日本植物分類学会誌」11(1), pp.35-46
  6. 浅井達弘(2000)『ハウチワカエデの雌雄異熟性』「北海道林業試験場研究報告」37, pp.27-40

Gallery

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樹形

宮城県外山(May 4, 2021)

北海道から本州にかけての山地に自生している日本固有種です。

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樹形

宮城県外山(May 4, 2021)

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紅葉

日光植物園(Oct. 31, 2010)

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宮城県戸神山(May 1, 2021)

その葉は、鳥の羽を使った団扇「はうちわ」の名が付くように9〜11に分裂します。

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冬芽

山形市野草園(Apr. 9, 2022)

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葉の展開

日光植物園(Apr. 30, 2011)

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宮城県白沢五山(Apr. 17, 2022)

4月〜6月に咲く花は複散房花序で紅紫色をしているため、開花期はよく目立ちます。

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果実

山形市野草園(June 26, 2021)

果実は鈍角に開く翼果で、7〜9月に熟します。

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樹皮

宮城県戸神山(May 1, 2021)

樹皮は灰褐色で縦に浅い裂け目が入ります。

Property
分 類
和名 ハウチワカエデ(羽団扇楓)
別名 メイゲツカエデ(名月楓)
学名 Acer japonicum
(Syn. Acer japonicum var. kobakoense)
(Syn. Acer japonicum var. insulare)
(Syn. Acer japonicum var. circumlobatum)
(Syn. Acer japonicum f. viscosum)
(Syn. Acer japonicum f. villosum)
(Syn. Acer japonicum var. stenolobum)
ムクロジ目(Sapindales)
ムクロジ科(Sapindaceae)
カエデ属(Acer)
分布 日本
国内 本州、四国
用途
特 徴
針広 広葉樹
常落 落葉樹
樹高 高木
葉形 単葉(分裂)
葉序 対生
葉縁 鋸歯
雌雄 雌雄同株(両性花/雄花)
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