モチノキ目 chevron_right モチノキ科 chevron_right モチノキ属 chevron_right ヒメモチ
ヒメモチ
Ilex leucoclada

 北海道の南西部から本州の山陰地方までの日本海側、主に山地の明るい林内に自生している日本固有種です。樹高は1mに満たず、樹皮は灰褐色ですが、本年枝は緑色や紫褐色になります。常緑の葉は葉身が5〜12cmの狭楕円形で、全縁ではありますがまれに浅い鋸歯を持つものもあります。葉の裏は側脈が不明瞭でのっぺりとしています。当種は雌雄異株で、直径1cmに満たない小さな緑がかった白い花を5〜7月に咲かせます。4枚の花弁と対生して雄しべも4本あり、萼も4枚です。雌花には退化した雄しべが残っています。9〜10月には球状で直径1cmの果実が赤く熟しますが、この実は冬を越して翌年の開花まで残ることがあります。果実に含まれる種子は4つです。[1][2][3][4]

伏条更新

 ヒメモチは日本海側の多雪地帯に自生している日本海要素の1つです。特に、ブナ林の林床に生育していることが多いのですが、ブナは最終氷期に南下し、後氷期における温暖化と共に北上していったと考えられています。ブナの北限地とされている北海道の黒松内から島根県まで12地域に自生しているヒメモチのDNAを解析した研究があり、これによると北側に行くほど変異が低くブナと同様な分布変遷を持つと考えられるそうです。樹高が低く材がしなやかなヒメモチは、冬季の強風や乾燥に耐えられる安全な雪の下で越冬することができます。一方で雪の重みによって幹や枝が地面に付くことがあり、そこで根を出しその後分離することで別の個体として生長することができます。これを伏状更新と呼びます。斜面があれば雪の圧がより低い方へ向かうため、事実、クローンは斜面に沿って分布しているそうです。近縁種のツルツゲ(Ilex rugosa)と本種の雑種と考えられているオオツルツゲ(Ilex x makinoi)があります。[5][6][7]

参考文献
  1. 茂木透ら(2009)『樹に咲く花―離弁花(2)(第2版)』山と溪谷社
  2. 林将之(2014)『樹木の葉』山と溪谷社
  3. 梅沢俊(2018)『北海道の草花』北海道新聞社
  4. 加藤雅啓ら(2011)『日本の固有植物』東海大学出版会
  5. 平岡宏一ら(2007)『ヒメモチ集団のミトコンドリア・核DNA変異に与える分布変遷と地理的隔離の影響』「第118回日本森林学会大会」P3h40
  6. 渡辺一夫(2017)『アジサイはなぜ葉にアルミ毒を貯めるのか』築地書館
  7. 鳥丸猛(2005)『クローンを形成する雌雄異株低木ヒメモチにおけるクローン多様性と遺伝的変異』「名古屋大学森林科学研究」24, pp.45-84

Gallery

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樹形

八幡平(Sep. 3, 2022)

北海道の南西部から本州の山陰地方までの日本海側、主に山地の明るい林内に自生している日本固有種です。

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樹形

八甲田(July 22, 2023)

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八幡平(Sep. 3, 2022)

常緑の葉は葉身が5〜12cmの狭楕円形で、全縁ではありますがまれに浅い鋸歯を持つものもあります。

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葉の裏

八幡平(Sep. 3, 2022)

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雌花

八幡平(July 8, 2023)

当種は雌雄異株で、直径1cmに満たない小さな緑がかった白い花を5〜7月に咲かせます。

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果実

東栗駒山(Oct. 8, 2022)

9〜10月には球状で直径1cmの果実が赤く熟しますが、この実は冬を越して翌年の開花まで残ることがあります。

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未熟果

八幡平(Sep. 3, 2022)

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未熟果

八幡平(Sep. 3, 2022)

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樹皮

八幡平(Sep. 3, 2022)

樹皮は灰褐色ですが、本年枝は緑色や紫褐色になります。

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若い枝

八幡平(Sep. 3, 2022)

Property
分 類
和名 ヒメモチ(姫黐)
学名 Ilex leucoclada
(Syn. Ilex integra var. leucoclada)
モチノキ目(Aquifoliales)
モチノキ科(Aquifoliaceae)
モチノキ属(Ilex)
分布 日本
国内 北海道、本州
用途
特 徴
針広 広葉樹
常落 常緑樹
樹高 低木
葉形 単葉(不分裂)
葉序 互生
葉縁 全縁/鋸歯
雌雄 雌雄異株(単性花)
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