ブナ目 chevron_right ブナ科 chevron_right コナラ属 chevron_right ミズナラ
ミズナラ
Quercus crispula

 北海道から九州の山に広く生えています。ブナと生育地域が重なっていますが、日本海側等の多雪地帯ではブナが、それ以外の太平洋側に本種が優勢に生育しているようです。樹高が20〜30mに達し、直径で1m以上の大木になります。葉は長さ7〜15cmと大きく同属のカシワによく似ていますが、それよりも薄く、鋸歯が鋭くなっています。 樹皮は灰褐色で縦に深く切れ、薄くはがれます。花は5〜6月の葉の展開と同時に咲きます。果実は花が咲いた年の秋に成熟する長さ2~3cmのドングリで、野生動物の重要な食料になっています。苦味を取り除く灰汁抜きをすれば食べられます。[1][2]

 本種は樹皮のコルク層が厚く、山火事などの撹乱後の萌芽、また実生によってギャップを埋める先駆種です。一方で冷涼な気候地帯で生育している他の落葉広葉樹に比較すると耐陰性もあり、林冠下でも20年ほど持つということです。年によって種子が豊凶となる波はありますが、アズキナシのようにほとんど実をつけない大凶作という年がありません。本種の寿命は最大500年程度と見られていて、老齢木でなければ萌芽力もあります。同属のコナラやカシワなどと雑種を作りやすく、これらと混交している林分では自然交雑と見られる個体が多く見られます。[3][4][5]

ナラ枯れ

 1990年代以降、ナラ枯れと呼ばれる集団的に枯死する被害が拡大しています。これは体長4〜5mmのカシノナガキクイムシと呼ばれる甲虫がブナ科に穿孔し、その際にこのキクイムシが運んだ糸状菌(Raffaelea quercivora)によって枯死すると見られています。ところが面白いことに江戸時代にも同様な被害を受けていたことがわかっています。現在の長野県飯山市で1750年に大径木を中心としたナラ枯れが発生したことを記録した日記が見つかっています。菌を運ぶカシノナガキクイムシは遺伝子分析の結果によってその土地の自生種であることも判っています。つまりナラ枯れは、人為的な伐採等が行われず放置されたブナ科(ミズナラ、コナラ、マテバシイ、スダジイなど)の大径木化によってキクイムシが繁殖しやすくなったことが原因であると見られています。[6][7][8]

ウィスキー

 材は気乾比重が平均0.68と重厚で重く、また年輪の模様が美しいので、家具や家の床などに使われています。ただし、人工乾燥は極めて難しいそうです。過去、Japanese oakとしてヨーロッパに家具材用途などとして輸出されていました。またシイタケを栽培するための榾木に使われています。お酒のウィスキーを中で熟成させるための「たる(樽)」の材料にも使われています。材の水分が多いことからミズナラと呼ばれたそうです。別名はオオナラともいいます。[9]

参考文献
  1. 茂木透ら(2006)『樹に咲く花―離弁花(1)(第4版)』山と溪谷社
  2. 上原敬二(1959)『植物大図説』有明書房
  3. 渡辺一夫(2009)『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか』築地書館
  4. 渡邊定元(1994)『樹木社会学』東京大学出版会
  5. 日本樹木誌編集委員会(2009)『日本樹木誌(1)』日本林業調査会
  6. 鎌田直人(2008)『カシノナガキクイムシからみたブナ科樹木萎凋枯死被害(ナラ枯れ)研究の最前線』「樹木医学研究」12(2)、pp.61-66
  7. 井田秀行ら(2010)『ナラ枯れは江戸時代にも発生していた』「日本森林学会誌」92(2)、pp.115-119
  8. 大橋章博ら(2012)『ナラ枯れ被害対策マニュアル』日本森林技術協会
  9. 伊東隆夫ら(2011)『日本有用樹木誌』海青社

Gallery

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樹形

日光植物園(Oct. 31, 2010)

北海道から九州の山に広く生えています。樹高が20〜30mに達し、直径で1m以上の大木になります。

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筑波実験植物園(May 8, 2010)

葉は長さ7〜15cmと大きく同属のカシワによく似ていますが、それよりも薄く、鋸歯が鋭くなっています。

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冬芽

筑波実験植物園(Apr. 3, 2011)

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若葉

多摩森林科学園(Apr. 29, 2010)

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果実

北邦野草園(Oct. 8, 2012)

果実は花が咲いた年の秋に成熟する長さ2~3cmのドングリで、野生動物の重要な食料になっています。

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実生苗

厚岸町(July 1, 2011)

本種は樹皮のコルク層が厚く、山火事などの撹乱後の萌芽、また実生によってギャップを埋める先駆種です。

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樹皮

日光植物園(May 15, 2010)

樹皮は灰褐色で縦に深く切れ、薄くはがれます。

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幹の断面

東大北海道演習林(June 6, 2012)

材は気乾比重が平均0.68と重厚で重く、また年輪の模様が美しいので、家具や家の床などに使われています。

Property
分 類
和名 ミズナラ(水楢)
別名 オオナラ
学名 Quercus crispula
ブナ目(Fagales)
ブナ科(Fagaceae)
コナラ属(Quercus)
分布 日本、済州島、中国
国内 北海道、本州、四国、九州
用途 家具材、樽材
特 徴
針広 広葉樹
常落 落葉樹
樹高 高木
葉形 単葉(不分裂)
葉序 互生
葉縁 鋸歯
雌雄 雌雄同株(単性花)
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