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ヤチダモ
Fraxinus mandshurica

 国内では北海道から本州中部までの冷温帯、特に渓流沿いや湿地に生えています。大きいものだと樹高が30m、直径で100cmぐらいにまで育つ高木です。主幹が一本立ちして直立することが多いです。樹皮は灰白色で縦に裂けます。葉は奇数羽状複葉で小葉が3〜5対、小葉は長さ6〜15cmの楕円形で先端が細く尖り、細かい鋸歯があります。小葉には葉柄がなく、その基部には茶褐色の毛が密生しています。4~5月の葉が展開する前に花弁の無い花を咲かせます。雌雄異株で雌花は淡緑色から薄桃色を帯び、一方の雄花は紫から暗赤色を帯びます。果実は翼果で垂れ下がり、10月ごろに熟します。[1]

豊凶の激しい差

 開花時の樹形を遠くから観察すると枝先にいくつものコブが付いたように見えます。前年の果柄が開花時にも残るので、雌株かどうかはそれによっても判別できます。雌花には退化した雄しべがあります。結実はその年によって豊凶の差が激しいのが特長です。ほとんど結実しないような大凶作の年が見られ、2〜3年の周期で豊凶を繰り返します。湿地に生育すると書きましたが、実際には地下水位が高過ぎずまた低過ぎない場所。ハンノキ(過湿)とハルニレ(適潤)の間に分布していることが多いです。[2][3]

地理的遺伝構造

 温室効果ガスはよく知られている二酸化炭素だけでなく、メタンも主要なのものの1つです。湿地からはメタンが放出されますが、水生植物からもメタンが放出されることがわかっています。実は湿地に多いヤチダモやハンノキも同様であることがわかり、その放出のメカニズムに関する研究が進められています。自生地域に遺伝的差異があることが認められています。北半島から北海道の北部、下北半島から南の本州太平洋側と同じく本州日本海側の3つです。[4]

有用な材

 国内に生えている広葉樹の中でも幹が真っ直ぐで切断面も真円に近いです。木目が明瞭で美しく均質性があるため家具材や内装材に、また弾力性に優れていることからバットなどのスポーツ用品にも利用されてきました。[5]

 「タモ」と名の付く樹木には同属のアオダモ、クスノキ科のシロダモがあります。いずれも立派な木になることから樹霊として崇められ、その霊(タマ)がタモの語源となったいう説がありますが、トネリコ属とクスノキ科の語源は別とする見かたもあります。生活に欠かせない丸木舟の材料としてヤチダモはアイヌにとって重要な樹木でした。[6][7]

参考文献
  1. 茂木透ら(2000)『樹に咲く花―合弁花・単子葉・裸子植物(第3版)』山と溪谷社
  2. 渡邊定元(1994)『樹木社会学』東京大学出版会
  3. 崎尾均ら編(2002)『水辺林の生態学』東京大学出版会
  4. 内山憲太郎(2016)『日本の森林樹木の地理的遺伝構造(15)ヤチダモ(モクセイ科トネリコ属)』「森林遺伝育種」5、pp.217-222
  5. 伊東隆夫ら(2011)『日本有用樹木誌』海青社
  6. 深津正(1999)『植物和名の語源』八坂書房
  7. 福岡イト子(1995)『アイヌ植物誌』草風館

Gallery

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樹形

旭川市嵐山(July 22, 2012)

大きいものだと樹高が30m、直径で100cmぐらいにまで育つ高木です。

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開花時の樹形

勇払原野(May 10, 2015)

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雄花

勇払原野(May 10, 2015)

雌雄異株で雌花は淡緑色から薄桃色を帯び、一方の雄花は紫から暗赤色を帯びます。

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果実

勇払原野(Sep. 21, 2013)

果実は翼果で垂れ下がり、10月ごろに熟します。風に飛ばされて散布されます。

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果実

写真の下側にあるのが中に入っている種子。

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旭川市嵐山(July 22, 2012)

葉は奇数羽状複葉で小葉が3〜5対です。

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短枝の冬芽

旭川市嵐山(Jan. 13, 2013)

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樹皮

北邦野草園(June 2, 2012)

樹皮は灰白色で縦に裂けます。

Property
分 類
和名 ヤチダモ(谷地梻)
別名 タモ
学名 Fraxinus mandshurica
(Syn. Fraxinus nigra subsp. mandshurica)
(Syn. Fraxinus mandshurica var. japonica)
(Syn. Fraxinus excelsissima)
シソ目(Lamiales)
モクセイ科(Oleaceae)
トネリコ属(Fraxinus)
分布 日本、朝鮮半島、中国、シベリア、サハリン
国内 北海道、本州
用途 家具材、スポーツ用材(バット、ラケット)
特 徴
針広 広葉樹
常落 落葉樹
樹高 高木
葉形 羽状複葉(奇数)
葉序 対生
葉縁 鋸歯
雌雄 雌雄異株
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