本州から九州までの山地などに自生しています。
ヤマコウバシ
Lindera glauca
本州から九州までの山地などに自生しています。樹高は3〜6mほどにまで生長しますが、叢生して横にも広がる楕円体の樹形になります。樹皮は淡褐色や茶褐色で小さい皮目が多くあります。葉身が5〜10cmで厚く硬めの葉は楕円形で、葉柄が短くて縁が波打ち全縁です。裏面は灰白色で長めの白い毛が生えています。若い枝にも長い毛が生えています。落葉樹なので葉は枯れるのですが、枝に付いたままで落ちることなく、翌年の春まで残ることが多いです。同属のアブラチャンやクロモジなどと異なり花を咲かせる冬芽は、特徴的な球形の花芽ではなく葉と花が一緒に入っている紡錘形の混芽です。4月、展開し始めた葉の脇から絹毛に覆われた長さ6〜8mmの花柄を出し、小さな花を咲かせます。10〜11月に黒く熟す果実は直径が6〜7mmの球形です。[1][2]
アポミクシス
中国など海外では雄株もあるそうですが、国内に自生しているヤマコウバシは雌株しか見つかっていません。つまり無性生殖をしていると考えられますが、その自生地は本州から九州までとかなりの範囲であり、長い間の謎でした。ヤマコウバシは無融合生殖(アポミクシス)という一種の無性生殖を行うことが知られています。被子植物における無融合生殖とは受精を経ずに種子を生産することのできる生殖様式です。そのため挿し木も無性生殖ですが種子を作らないため無融合生殖ではありません。無融合生殖をする木本は他にもキイチゴ類やサンザシ、ザイフリボク、ナナカマドなどがあります。実は、中国国内でも雄株は極めて稀な存在であることがわかっています。中国本土のほぼ全域から300個体を採取した研究でも雄株は採取できなかったそうです。この研究では葉緑体DNAと核DNAを用いた分析により遺伝的変異が調べられました。大きく2つの集団に分けられたものの遺伝的変異に乏しく、有性生殖も一定程度ありましたが多くは無性生殖であると推測されました。一方の日本国内のヤマコウバシは、最近の研究により新たな知見が得られました。この研究では仙台市から熊本市までの29か所から採取した147サンプルのDNAを分析した結果、遺伝的変異が非常に乏しく、国内のヤマコウバシすべてが1本の雌株から生じたクローンであることが示唆されました。[3][4][5]
トロシバ
過去には、食べるものが乏しい山村などではヤマコウバシの若葉を乾燥、粉末化したものにお湯を加えて蕎麦がきのようにして食していたそうです。また、粘性が出るため蕎麦を打つ際のつなぎとしてこの粉が用いられていたとのことです。粉末は「トロシバ」と呼ばれ、ヤマコウバシそのものもトロシバの木と呼ばれていました。中国では葉や果肉からの抽出物を芳香油として利用していたようです。大阪府北西部の豊能町で採取された果実の精油成分はtrans-β-オシメンが最も多く36.1%、グラウシ酸が8.3%、1,8-シネオールが3.4%の順だったとのこと。trans-β-オシメンはハーバル系の香り成分で、爽やかでグリーンな香りです。1,8-シオネールはユーカリプトールとも呼ばれ、清涼感のある樟脳に似たミント系の香りがする香料です。[6][7][8]
Gallery
叢生して横にも広がる楕円体の樹形になります。
花を咲かせる冬芽は葉と花が一緒に入っている紡錘形の混芽です。
葉身が5〜10cmで厚く硬めの葉は楕円形です。
若い枝にも長い毛が生えています。
枯れた葉は、枝に付いたままで落ちることなく翌年の春まで残ります。
4月、展開し始めた葉の脇から小さな花を咲かせます。
国内に自生しているヤマコウバシは雌株しか見つかっていません。
10〜11月に黒く熟す果実は直径が6〜7mmの球形です。
樹皮は淡褐色や茶褐色で小さい皮目が多くあります。
Property
| 分 類 | |
|---|---|
| 和名 | ヤマコウバシ(山香し) |
| 別名 | モチギ、ヤマコショウ |
| 学名 | Lindera glauca |
| 目 | クスノキ目(Laurales) |
| 科 | クスノキ科(Lauraceae) |
| 属 | クロモジ属(Lindera) |
| 分布 | 日本、朝鮮半島、中国 |
| 国内 | 本州、四国、九州 |
| 用途 | 山菜、精油 |
| 特 徴 | |
|---|---|
| 針広 | 広葉樹 |
| 常落 | 落葉樹 |
| 樹高 | 低木 |
| 葉形 | 単葉(不分裂) |
| 葉序 | 互生 |
| 葉縁 | 全縁 |
| 雌雄 | 雌雄異株(単性花) |