山形県より南の本州から四国、九州、沖縄まで、山地の岩場や谷の斜面などに自生してます。
ヤマグルマ
Trochodendron aralioides
山形県より南の本州から四国、九州、沖縄まで、山地の岩場や谷の斜面などに自生してます。樹高は10m程度までですが、中には20m近くになるものもあるようです。樹皮は灰褐色で、皮目が目立ちます。輪生の様に葉柄を出す葉は長さが5〜15cmの倒卵形から広楕円形で尾状に先が尖ります。5〜6月には花弁のない黄緑色の花を咲かせます。5〜10個の雌しべが輪状に並び、その外側に雄しべが多数つきます。果実は袋果が集まった集合果で、10月ごろに熟すと裂けて種子を落とします。[1][2]
針葉樹みたいな広葉樹
写真の撮影場所である福島県の七ヶ岳は標高1,636mもある日本三百名山の1つですが、この頂上から尾根沿い、また沢沿いの谷地はヤマグルマだらけです。七ヶ岳の西側斜面にスキー場があるぐらいですので、かなりの雪が降ります。そういった厳しい冬に見舞われる場所に常緑広葉樹の高木があるというのは特異的です。針葉樹は仮道管によって根から上部へ水を吸い上げていますが、広葉樹はより効率良く水を吸い上げる道管に進化しています。ただし寒冷地では道管に泡が入り込みやすく、水の供給を滞らせてしまうので、水を運ぶ距離の長い高木の広葉樹は寒冷地に弱いのです。ところがヤマグルマは広葉樹のくせに道管でなく仮道管を持っています。そのため寒冷地で生長することができるのです。仮道管を持つヤマグルマは被子植物のなかで祖先的な位置にある、つまり進化の途中で取り残された種とこれまで考えられ、例えばクロンキスト体系では被子植物の基部に近いモクレン綱マンサク亜綱にヤマグルマ目は位置付けられていました。ところが分子系統学により、ユリ目やイネ目のある単子葉類をも飛び越えてその先の真正双子葉類に位置付けられました。ヤマグルマの仮道管は先祖返りだったのです。ちなみに、珪酸が90%以上を占めるチャートなどの珪質岩の地質でヤマグルマはよく見られるのですが、七ヶ岳はデイサイト質溶結凝灰岩ですので、そこまで珪酸が豊富な地質ではありません。[3][4]
異形異熟
ヤマグルマは雌しべと雄しべが1つの花にある両性花ですが、雄しべが花粉を出してから雌しべが成熟する個体(雄性先熟)、逆に雌しべを受粉させてから雄しべが花粉を出す個体(雌性先熟)の2種類の個体が存在します。これによって自家受粉を避けることができるわけです。雌雄異花も含めたこのような開花様式をHeterodichogamy、日本語で異形異熟や異型雌雄異熟性などと呼びます。自家受粉はいわゆる近親結婚ですから、繁殖能力が低下し種を絶滅へと導くことになります。進化によって自家受粉を避ける仕組みができたわけです。なお、雄性期と雌性期を合わせるとヤマグルマは1か月近く花を咲かせているそうです。[5]
Gallery
輪生状に葉柄が出ている葉は長さが5〜15cmの倒卵形から広楕円形で尾状に先が尖ります。
5〜6月には総状花序で花弁のない黄緑色の花を咲かせます。
雄しべが落ちている
柱頭が色づいている
10月ごろに熟すと裂けて種子を落とします。
樹皮は灰褐色で、皮目が目立ちます。
Property
| 分 類 | |
|---|---|
| 和名 | ヤマグルマ(山車) |
| 別名 | トリモチノキ |
| 学名 | Trochodendron aralioides |
| 目 | ヤマグルマ目(Trochodendrales) |
| 科 | ヤマグルマ科(Trochodendraceae) |
| 属 | ヤマグルマ属(Trochodendron) |
| 分布 | 日本、朝鮮半島、中国、台湾 |
| 国内 | 本州、四国、九州、沖縄 |
| 用途 | |
| 特 徴 | |
|---|---|
| 針広 | 広葉樹 |
| 常落 | 常緑樹 |
| 樹高 | 高木 |
| 葉形 | 単葉(不分裂) |
| 葉序 | 互生 |
| 葉縁 | 鋸歯 |
| 雌雄 | 雌雄同株(両性花) |