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ハルニレ
Ulmus davidiana var. japonica

 北海道に多く見られますが、北海道以外でも山地に生えています。湿った土地にあることが多いですが、ハンノキが優勢になる地下水位が高い土地よりも低い土地に多いようです。また土砂の流出などによって地表が撹乱された土地で生育している例が多く、特に本州では山地河畔林を構成し、川よりも多少高い地点にある洪水の被害を受けにくい段丘状地に優先しています。[1][2][3][4][5][6]

 樹高は20〜30mになります。樹皮は縦に列状に裂け、不規則に剥がれます。葉は長さが3〜15cmほどの卵形で、中心よりも先端側が太く先が尖ります。葉の表面はざらつき、葉柄側は左右不相称です。葉縁には深い鋸歯があります。葉が展開するよりも早く3〜5月に小さな花が複数集まって咲きます。長さ10〜15mmの平べったい円形の果実が、花が終わってからすぐの5〜6月に成熟します。両面を焼いた目玉焼きのようにも見え、黄身に該当する部分が直径5〜6mmの種子です。白身の部分はいわゆる翼で風に乗って種子を飛ばす事ができます。このような果実を翼果と呼びます。

アットゥシ織

 材は気乾比重が平均0.63と重く、また堅く割れにくい性質をもっているため、お椀や盆、臼や杵、家具材として用いられます。ハルニレは単なる木材としてだけでなく様々な用途に利用されてきました。樹皮は繊維が強いため縄に、またアイヌは強靭なアットゥシ織にして衣服に利用しました。現在でも民芸品としてアットゥシ織のポーチなどが販売されています。細切りにした根から得た粘液はノリウツギやトロロアオイと同じく和紙の「ネリ」に、またカリウムを多く含むため材を燃やして利用したり、葉は家畜の飼料に用いられてきました。[7][8]

 その名は春に花が咲くことから。また単にニレと呼ばれたり、赤い材はヤチダモの代替として使われていたため特に材木に対してはアカダモと呼ばれたりしています。エルムはニレの英語名「Elm」から。ちなみにハルニレの英語名は「Japanese Elm」です。

参考文献
  1. 林将之(2004)『葉で見わける樹木』小学館
  2. 茂木透ら(2009)『樹に咲く花―離弁花(1)(第4版)』山と溪谷社
  3. 上原敬二(1959)『植物大図説』有明書房
  4. 日本樹木誌編集委員会(2009)『日本樹木誌(1)』日本林業調査会
  5. 崎尾均ら編(2002)『水辺林の生態学』東京大学出版会
  6. 和田美貴代ら(2004)『上高地梓川氾濫原におけるハルニレ実生の発生と定着』「植生学会誌」21(1)、pp.27-38
  7. 農商務省山林局(1912)『木材ノ工藝的利用』大日本山林會
  8. 諸戸北郎(1903)『大日本有用樹木効用編』嵩山房

Gallery

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樹形

北邦野草園(June 2, 2012)

樹高は20〜30mになります。

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冬季の樹形

北邦野草園(Dec. 8, 2012)

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種子を実らせた樹形

北大苫小牧研究林(May 20, 2018)

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冬芽

日光植物園(July 15, 2011)

葉が展開するよりも早く3〜5月に小さな花が複数集まって咲きます。

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果実

北大苫小牧研究林(May 20, 2018)

長さ10〜15mmの平べったい円形の果実が、花が終わってからすぐの5〜6月に成熟します。

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日光植物園(July 15, 2011)

葉の表面はざらつき、葉柄側は左右不相称です。

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樹皮

日光植物園(July 15, 2011)

樹皮は縦に列状に裂け、不規則に剥がれます。

Property
分 類
和名 ハルニレ(春楡)
別名 ニレ、エルム、アカダモ
学名 Ulmus davidiana var. japonica
バラ目(Rosales)
ニレ科(Ulmaceae)
ニレ属(Ulmus)
分布 日本、朝鮮半島、中国
国内 北海道、本州、四国、九州
用途 器具材、家具材、建築材
特 徴
針広 広葉樹
常落 落葉樹
樹高 高木
葉形 単葉(不分裂)
葉序 互生
葉縁 鋸歯
雌雄 雌雄同株(両性花)
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